小手修理の思い出
もう50年近くも前のことになるけれど中学生の時に使っていた時の小手の手の内が破れて
しまいどうにかして繕いたいと思っていたのだけれど、どうしたら良いのかわからなかった。
自転車で自宅から10キロぐらい離れた靴屋さんに手の内の皮を買いに行ったことがある。
当時は皮靴は今のように使い捨てのような感じでなく傷んだら修理するのが普通でたい
てい靴屋さんは修理の皮を置いてあった。
自分の使っていた剣道の防具は祖父の弟が使っていた旧陸軍時代のもので当時として
は立派なものだった。
靴屋さんに行き「あの皮が欲しんですけど」というと「何に使うの?」と聞かれた。
小手の手の内を修理する理由を話すと、靴屋のおじさんは熱心な子供だと思ったのか
「あげるよ」とと皮をくれた。それは鹿の皮ではなく牛の皮だった。当時は手の内の皮が鹿
の皮であることは知らなかった。さて、おじさんにいただいたのは良かったがどうしたら修理
できるのかその方法がわからない。
手の内、小手本体、ヘリ革を外した。当時の小手はヘリ革はケラの部分(小手の甲の
部分)と一体であった。修理用の針も無いし糸もない。考えた挙句、大工道具から錐
を出してきて先に小手と切り取った手の内に穴を開けておき、釣り糸で縫い上げた。
その後、その小手でかなり練習し小手は破れなかったことから、うまく修理出来たのだろう
と思う。今から思うと12、3才の子供にあれだけの集中力がよくあったものだった思う。
高校に入って同じような場面があったけれど、その時は破れた小手を見るのも嫌だった。